生々しくてごめん [健康・病気]
前回のブログでオペを受けたことを書いた。
一度で書くにはあまりにも長すぎたので、これは当時の補足だったりする。
浪人生活が始まって間もない頃から熱も腫れもないのに足に捻挫のような痛みを感じるようになり、その状態が数か月続いた。
しかも朝起きた時は何ともないのに、昼過ぎ頃から痛みだすのだ。
「?????」
と地元の整形外科にかかったところレントゲンを見た医師(当時研修医)が一言。
「骨が穴が開いています」
確かに骨の中に一部穴のようなものが開いている。
大きさは女性の小指の爪くらい。
そのまま精密検査となりあれよあれよと言う間にオペまで行ってしまったのだ。
当時はMRIもまだなかったし、CTもそんなに性能が良かったわけでもないので色んな検査を受けた。
全身骨格も撮った。
当時、医師は骨腫瘍を疑ったらしい。
「この病院で手に負えない場合は大学病院(ここでは新潟大学医学部付属病院)に行ってもらうことになります」
そう言われていたモノの、
「正直なところ開けてみなければ分かりませんが、多分大丈夫でしょう」
と言う決断で地元の病院でのオペとなった。
下半身麻酔なので意識はある。
おまけに手術室なんて滅多に入れる所じゃない。
おそらく好奇心で目をキラキラさせながら周囲を見回していたのではなかろうか。
「それ、何に使うの? その道具、何?」
執刀医が入ってくるまでオペ準備をしているナースに質問しまくっていた。
ところが布で視界を遮られるので医師とスタッフのかすかな声は聞こえるけれど内容が分からない。
腕は点滴や血圧の機械などをつけられているので動かせない。
おまけに麻酔の関係で体温と血圧が低くなっている。
「暇だなー。することないし、眠くなってきたなー」
うとーーーとし始めたところ、恐ろしくハイテンションだった私が急に静かになったことにナースが気づいたのだろう。
怪訝な顔で私の顔をのぞき込み
「今、切開して患部を探しているのよ。急に静かになったけど具合に変わりはない?」
「眠いです‥」
「‥‥‥‥。
寝たかったら寝てていいわよ? この状況で眠れるのなら」←かなり呆れ口調&棒読み
「あー、それじゃ遠慮なくー、おやすみなさーい」
うとうとしててどのくらい時間が流れたのかわからないけど、突然どよめきが聞こえた。
この声で目が覚め、患部にたどり着いたことが分かった。
骨を削り取る音や洗浄だろうか、掃除機のような機械音が聞こえしばらくしてから静かになった。
「?」
と思ったら執刀医が私の顔を覗き込んで
「終わったよ」
その時聞いた話によると普通の骨の中に、なにやらゼリー状ものが詰まっていたというのだ。←そこがレントゲンに写らなかった穴の部分。
しかもその周囲は目の粗い織物のような組織に囲まれていたらしい。
目の前に差し出されたシャーレには3つに割れた私の骨。
しかもまだ血が付いている。
医師は反対の手にピンセットを持ち、骨の硬い部分をたたく。
乾いた音がしてピンセットは跳ね上がった。
「硬いだろう?」
黙って頷く私。
「でもこの部分はね」
織物のような箇所をピンセットでつつくと柔らかいのか音がしないし、弾力があるのが分かる。
「あ、面白そう。私もやりたい」
の一言は華麗に無視された。
「その骨、どうするの?」
「研究に使うよ。
まずゼリー状の成分を調べるだろ。
それからこの弾力ある部分を顕微鏡でのぞいて、周辺組織を見るだろ。
それからこの周囲のカルシウムを抜いてから成分を調べるだろ。
更にバケラッタバケラッタバケラッタ(専門用語につき意味不明)して調べ倒して、学会で発表して最後は標本にするつもりだよ」
この時の執刀医はそれは嬉しそうだった。
「でもなんで?」
「手術記念にそれ、ちょうだい」
医師の笑顔が引きつった。
「君が持ってても役に立たないよね」
「自分の骨なんてそうそう手に入らないじゃないですか。
瓶にでも詰めて部屋に飾っておきますよ(^^)」
「原因、知りたくない?」
「いえ、病気じゃなければ特に」
「しかし医師たるもの、今後の医学の貢献のためにバケラッタバケラッタ(難しい言葉につき理解不能)」
「いや、私医師じゃないんで」
「‥‥‥‥」
相変わらずの表情の私をちらりと見てから医師はにっこり笑い
「ここでこんな話をしててもなんだから、続きは病室に戻ってからにしようか」
そう言ってナースと一緒にストレッチャーに乗せ、
「後はよろしく」
手術室の外に控えていた両親に挨拶して
「手術は成功です、無事に終わりました。
お嬢さんも元気です、今出てきますから」
そう言ってシャーレを大事そうに抱えながら逃げるように廊下を猛ダッシュで去って行ったそうな。
「普通は身内に摘出した組織を見せるとかして結構丁寧に説明してくれるのにねぇ。
あんた、何か変なことを言ったんじゃないの?」
どきっ、ぎくっ、ぐさっ
変なところで鋭いぞ、母。
さらに翌日(土曜か日曜、いずれにせよ休診日)、病室に私服でふらりと顔を出し
「昨日の骨、すぐに大学に送ったから手元にもうないからね、ねだっても無駄だよ」
‥‥‥‥。
あんた、それを言うためだけにわざわざ病室まで来たんかい。
なのでこの時聞いてみた。
「そんなに珍しかったんですか?」
「いや、よくあることだよ」
1週間ほどで退院し、ギブス生活を1ヶ月ちょい。
通院も授業に影響のない日に週に1度。
ようやくギブスも取れ、リハビリに移る。
最後から2度目の通院の時、その医師は学会で不在で別の医師が代理で来ていた。
「この学会ってひょっとして‥」
「あんたの骨を発表しているんでしょうね」
ついに全国デビューか。(違)
そして最後の通院。
ようやく必要なくなった杖を病院に返し、傷跡とレントゲンで経過をチェック。
一通り説明してから
「原因がわかったよ」
短期間で急激に身長が伸びたために体の成長に骨の生育が追い付かず、骨になりそこなった箇所が骨の主成分のまま残ってしまったというのだ。
場所はくるぶしのあたりだから全身の体重がかかる。
浪人して環境が変わり一気に4kgほど太ったため、負荷がかかって痛みが出たとのこと。
だから寝起きの朝は痛くなかったわけね。
その話を聞いてもう一度質問した。
「そんなに珍しかったんですか?」
「極めて稀だね」
「良くあること」=成長期のトラブル
「極めてまれ」=私の症例
こういうことらしい。
‥‥‥‥‥。
日本語って便利だね。(--;
そして当時の記憶を掘り起こしてここまで書いてみて改めて思った。
私が医者ならこの患者、絶対に忘れない。
一度で書くにはあまりにも長すぎたので、これは当時の補足だったりする。
浪人生活が始まって間もない頃から熱も腫れもないのに足に捻挫のような痛みを感じるようになり、その状態が数か月続いた。
しかも朝起きた時は何ともないのに、昼過ぎ頃から痛みだすのだ。
「?????」
と地元の整形外科にかかったところレントゲンを見た医師(当時研修医)が一言。
「骨が穴が開いています」
確かに骨の中に一部穴のようなものが開いている。
大きさは女性の小指の爪くらい。
そのまま精密検査となりあれよあれよと言う間にオペまで行ってしまったのだ。
当時はMRIもまだなかったし、CTもそんなに性能が良かったわけでもないので色んな検査を受けた。
全身骨格も撮った。
当時、医師は骨腫瘍を疑ったらしい。
「この病院で手に負えない場合は大学病院(ここでは新潟大学医学部付属病院)に行ってもらうことになります」
そう言われていたモノの、
「正直なところ開けてみなければ分かりませんが、多分大丈夫でしょう」
と言う決断で地元の病院でのオペとなった。
下半身麻酔なので意識はある。
おまけに手術室なんて滅多に入れる所じゃない。
おそらく好奇心で目をキラキラさせながら周囲を見回していたのではなかろうか。
「それ、何に使うの? その道具、何?」
執刀医が入ってくるまでオペ準備をしているナースに質問しまくっていた。
ところが布で視界を遮られるので医師とスタッフのかすかな声は聞こえるけれど内容が分からない。
腕は点滴や血圧の機械などをつけられているので動かせない。
おまけに麻酔の関係で体温と血圧が低くなっている。
「暇だなー。することないし、眠くなってきたなー」
うとーーーとし始めたところ、恐ろしくハイテンションだった私が急に静かになったことにナースが気づいたのだろう。
怪訝な顔で私の顔をのぞき込み
「今、切開して患部を探しているのよ。急に静かになったけど具合に変わりはない?」
「眠いです‥」
「‥‥‥‥。
寝たかったら寝てていいわよ? この状況で眠れるのなら」←かなり呆れ口調&棒読み
「あー、それじゃ遠慮なくー、おやすみなさーい」
うとうとしててどのくらい時間が流れたのかわからないけど、突然どよめきが聞こえた。
この声で目が覚め、患部にたどり着いたことが分かった。
骨を削り取る音や洗浄だろうか、掃除機のような機械音が聞こえしばらくしてから静かになった。
「?」
と思ったら執刀医が私の顔を覗き込んで
「終わったよ」
その時聞いた話によると普通の骨の中に、なにやらゼリー状ものが詰まっていたというのだ。←そこがレントゲンに写らなかった穴の部分。
しかもその周囲は目の粗い織物のような組織に囲まれていたらしい。
目の前に差し出されたシャーレには3つに割れた私の骨。
しかもまだ血が付いている。
医師は反対の手にピンセットを持ち、骨の硬い部分をたたく。
乾いた音がしてピンセットは跳ね上がった。
「硬いだろう?」
黙って頷く私。
「でもこの部分はね」
織物のような箇所をピンセットでつつくと柔らかいのか音がしないし、弾力があるのが分かる。
「あ、面白そう。私もやりたい」
の一言は華麗に無視された。
「その骨、どうするの?」
「研究に使うよ。
まずゼリー状の成分を調べるだろ。
それからこの弾力ある部分を顕微鏡でのぞいて、周辺組織を見るだろ。
それからこの周囲のカルシウムを抜いてから成分を調べるだろ。
更にバケラッタバケラッタバケラッタ(専門用語につき意味不明)して調べ倒して、学会で発表して最後は標本にするつもりだよ」
この時の執刀医はそれは嬉しそうだった。
「でもなんで?」
「手術記念にそれ、ちょうだい」
医師の笑顔が引きつった。
「君が持ってても役に立たないよね」
「自分の骨なんてそうそう手に入らないじゃないですか。
瓶にでも詰めて部屋に飾っておきますよ(^^)」
「原因、知りたくない?」
「いえ、病気じゃなければ特に」
「しかし医師たるもの、今後の医学の貢献のためにバケラッタバケラッタ(難しい言葉につき理解不能)」
「いや、私医師じゃないんで」
「‥‥‥‥」
相変わらずの表情の私をちらりと見てから医師はにっこり笑い
「ここでこんな話をしててもなんだから、続きは病室に戻ってからにしようか」
そう言ってナースと一緒にストレッチャーに乗せ、
「後はよろしく」
手術室の外に控えていた両親に挨拶して
「手術は成功です、無事に終わりました。
お嬢さんも元気です、今出てきますから」
そう言ってシャーレを大事そうに抱えながら逃げるように廊下を猛ダッシュで去って行ったそうな。
「普通は身内に摘出した組織を見せるとかして結構丁寧に説明してくれるのにねぇ。
あんた、何か変なことを言ったんじゃないの?」
どきっ、ぎくっ、ぐさっ
変なところで鋭いぞ、母。
さらに翌日(土曜か日曜、いずれにせよ休診日)、病室に私服でふらりと顔を出し
「昨日の骨、すぐに大学に送ったから手元にもうないからね、ねだっても無駄だよ」
‥‥‥‥。
あんた、それを言うためだけにわざわざ病室まで来たんかい。
なのでこの時聞いてみた。
「そんなに珍しかったんですか?」
「いや、よくあることだよ」
1週間ほどで退院し、ギブス生活を1ヶ月ちょい。
通院も授業に影響のない日に週に1度。
ようやくギブスも取れ、リハビリに移る。
最後から2度目の通院の時、その医師は学会で不在で別の医師が代理で来ていた。
「この学会ってひょっとして‥」
「あんたの骨を発表しているんでしょうね」
ついに全国デビューか。(違)
そして最後の通院。
ようやく必要なくなった杖を病院に返し、傷跡とレントゲンで経過をチェック。
一通り説明してから
「原因がわかったよ」
短期間で急激に身長が伸びたために体の成長に骨の生育が追い付かず、骨になりそこなった箇所が骨の主成分のまま残ってしまったというのだ。
場所はくるぶしのあたりだから全身の体重がかかる。
浪人して環境が変わり一気に4kgほど太ったため、負荷がかかって痛みが出たとのこと。
だから寝起きの朝は痛くなかったわけね。
その話を聞いてもう一度質問した。
「そんなに珍しかったんですか?」
「極めて稀だね」
「良くあること」=成長期のトラブル
「極めてまれ」=私の症例
こういうことらしい。
‥‥‥‥‥。
日本語って便利だね。(--;
そして当時の記憶を掘り起こしてここまで書いてみて改めて思った。
私が医者ならこの患者、絶対に忘れない。
2008-12-16 09:53
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コメント(6)
極めてまれな、成長痛だったってことね。カカトに近い部分かな?
手術室の雰囲気は、独特。もう何回入ったかな・・・自慢することか!
膝のときは、モニターまで見ちゃった。看護師さんが「見なくちゃソン、ソン」みたいな言い方するから。一番簡単な奴のときだったから、見られたのかもね。ワタシは骨折を止めてあった釘を、記念にもらってきたけど・・・骨だったらね~~?きわめてレアな要求をする患者、ワタシが医者でも、ゼッタイ忘れないでしょう。
by okko (2008-12-16 14:31)
こりゃ忘れられないでしょう(^^
膝の怪我をしたとき、左膝に溜まった血を注射で220cc抜きましたが、流石に見なかったです・・・。
注射針が入って行っている感覚は「ゴゴッ」っと言う感覚で判りましたが、痛みは無かったですね。麻痺していたのかな・・・。(麻酔は無し)
手術ってまだ経験は無いですね。この時の怪我が内側靭帯でなく、外側靭帯か十字靭帯であったら靭帯回復手術でした・・・。
私は成長痛って無かったから・・・。
骨組成組織が骨になりきらないって・・・、そう言うのがあるんですね・・・。
体って不思議ですね。
by テレマーカー (2008-12-16 22:12)
前記事から、じっくり読ませていただきました。
by ゴーパ1号 (2008-12-16 22:30)
前の記事では、こんな生々しいものを患者に見せるなんて、変わった医者だなぁ。と思っていたのですが、qinさんのキャラを計算に入れるのを忘れてました^^
by とり (2008-12-17 21:11)
めちゃめちゃインパクトあるじゃないですかっ。
覚えてないだろう、なんて前記事の発言、取り消して。(爆)
by がま親分 (2008-12-18 00:35)
xml_xslさん、takemoviesさん、shinさん
ナイスをありがとうございます。
okkoさん
確かに成長痛としては遅すぎですね。(^-^;
身長が伸び始めた頃は確かに足がきしむように痛んだ記憶はあります。
そう、くるぶしのあたりだからかかとに近いの。
体重がかかって無理が来たんですね。
ちなみに医師は
「骨はあげられないけど、こっちは記念に持って帰ってもいいよ」
と落書きだらけの石膏ギブスを渡してくれました。
丁重にお断りいたしました。
テレマーカーさん
やっぱり記憶に残る患者ですか?
オペは痛いですよー、麻酔が切れてから翌日までの一晩が辛い。
しないならしないに越したことがないです。
ちなみに私自身はこういう状況になると
「絶対に速攻で治して復活してやる」
と気力がでてくるタイプ。(^-^;
翌日に導尿の管をはずしてもらい、歩きまわっていました。
骨になりきらない、というのは相当珍しい症例のようですよ。
医師は大喜びしてましたから。
ゴーパ1号さん
ちなみにこの時に笑い話になりそうな事件がありました。
それもそのうちUPします。
とりさん
医師も骨のおねだりに面食らったかもしれないですね。(^^;;;
姉がバイト帰りに病院に立ち寄り、私の顔を見てちょっと話をしてから帰る、という日常を送っていたのですが、その医師は退院前の診察で
「うちの娘たちもいずれこんななるのかなぁ」
と一言。
ちなみに当時、幼稚園に行くか行かないかくらいの年齢のお嬢さんたちが病院の庭で遊んでいる光景を窓からよく見かけました。
他の人の話で執刀医のお嬢さんと知りました。
一体どういう意味だ?(--;
がま親分さん
え、インパクトあります?
記憶にばっちり残ってます?
でも随分昔の話ですよ?
私が医師なら絶対に忘れない患者ですが、向こうはどうなのかなー? と思った次第で。
by qin (2008-12-22 20:33)